ハワイの花と聞いて、
何を思い浮かべますか?
白や黄色。
ピンク。
赤。
甘い香りを漂わせる、
Plumeria(プルメリア)。
レイに使われ、
髪に飾られ、
ホテルや住宅の庭にも咲いている。
今では「ハワイらしい花」の代表格です。
ところが——
プルメリアは、ハワイ原産の植物ではありません。
ハワイ大学によると、プルメリアの原産地はメキシコ、中央アメリカ、ベネズエラなど。
そしてハワイへ最初の品種が持ち込まれたのは、
1860年。
ドイツ人医師・植物学者William Hillebrandによって導入されたとされています。
意外と最近です。
ではなぜ、外国からやってきた花が、
これほどまでに「ハワイの花」になったのでしょうか。
プルメリアの故郷はハワイではない
Plumeriaはキョウチクトウ科の植物です。
ハワイ大学は、その原産地をメキシコ、中央アメリカ、ベネズエラとしています。
つまり、古代ハワイの森にプルメリアが咲いていたわけではありません。
ポリネシア人が最初にハワイへ渡ったときに持ってきた「カヌープランツ」でもありません。
現在のハワイではあまりにも自然に風景へ溶け込んでいるので、
これはちょっと意外です。
ハワイに来たのは1860年
ハワイ大学CTAHRの資料によると、1860年、William Hillebrandが最初のプルメリアの栽培品種をハワイ諸島へ導入しました。
黄色い花を咲かせる品種で、現在は一般にCommon Yellowと呼ばれています。
その後、1900年代初頭には、
P. rubra ‘Cerise’
P. obtusa ‘Singapore’
などもハワイへ入ってきました。
そこから品種改良や栽培が進み、
現在の色とりどりのプルメリアへつながっていきます。
最初は墓地にも多く植えられた
これも、現在の華やかなイメージからすると意外です。
最初に導入されたCommon Yellowは、
香りのよい花をたくさん咲かせ、
比較的管理もしやすかったことから、
家庭の庭だけでなく墓地にも多く植えられました。
そのため、かつては「Graveyard Yellow」という呼び名まであったとハワイ大学の資料に残っています。
今では、
歓迎。
レイ。
南国。
リゾート。
そんな明るいイメージの強いプルメリア。
でもハワイでの歴史をたどると、最初から現在と同じイメージだったわけではありません。
なぜプルメリアはハワイに広がった?
理由のひとつは、
ハワイの気候との相性の良さです。
プルメリアは暖かく乾燥した環境に適し、ハワイでは標高約2,000フィートまで広く栽培されています。
花は香りがあり、色や形のバリエーションも豊富。
さらにハワイ大学の資料では、ハワイではおおむね5月から11月にかけて花を咲かせるとされています。
そして、もうひとつ大きかったのが、
レイ文化との出会いです。
プルメリアとレイ
現在、プルメリアはレイに使われる代表的な花のひとつです。
花をつなぎ、
誰かに贈る。
迎えるとき。
祝うとき。
感謝を伝えるとき。
プルメリアの香りや華やかな姿は、レイとの相性がとてもよかったのでしょう。
2024年にはハワイ大学が、地元のレイ産業を支えるため、新しいプルメリアコレクションの栽培プロジェクトを始めています。
つまりプルメリアは、
昔ハワイへ持ち込まれた花
というだけではありません。
今もハワイのレイ文化の中で使われ続けている花なのです。
「ハワイ原産」と「ハワイらしい」は違う
ここは、ハワイの植物を知るときに面白いところです。
植物学的には、
プルメリアはハワイ原産ではありません。
でも文化や風景として見ると、
ものすごくハワイらしい。
この二つは矛盾しません。
実際、ハワイ大学も現在のプルメリアを「Hawaiʻi’s most iconic and cherished flowers」のひとつとして紹介しています。
原産ではない。
それでも、
長い時間そこで育てられ、
人々に愛され、
レイに使われ、
暮らしの風景に入り込んでいく。
すると、その土地を象徴する存在になっていくことがあります。
ハワイには本来の植物もある
もちろん、
「プルメリアもハワイらしいんだから、原産かどうかなんてどうでもいい」
という話ではありません。
ハワイには、世界のほかの場所には自然分布しない**固有種(endemic)や、もともと自然に分布していた在来種(indigenous)**が数多くあります。
ハワイの在来植物を扱うデータベースでも、それぞれを区別して紹介しています。
たとえば、プルメリアと同じキョウチクトウ科には、
Maile(マイレ)
というハワイ在来の植物があります。
Native Plants Hawaiʻiも、Maileと非在来のPlumeriaが同じ植物科に属することを紹介しています。
「ハワイでよく見る植物」と、
「ハワイにもともと存在した植物」。
この違いを知っておくと、ハワイの植物を見る目が少し変わります。
プルメリアのハワイ語は?
プルメリアには、
Melia(メリア)
というハワイ語名があります。
ハワイ大学の資料でも、Plumeriaの呼び名のひとつとしてMeliaが紹介されています。
外国から来た植物が、
土地で名前を持ち、
育てられ、
人々の暮らしへ入っていく。
それだけでも、プルメリアがハワイで歩んできた時間を感じます。
「よそ者」が、ハワイの風景になった
私はプルメリアの話で、
ここが一番面白いと思っています。
1860年にやってきた一つの花。
最初から、
「ハワイを象徴する花になろう」
なんて決めていたわけではありません。
ただ、
ハワイの土に植えられた。
太陽を浴びた。
毎年花を咲かせた。
人々がその花を使った。
レイになった。
庭に植えられた。
そして世代を越えて、
その風景を人が見続けた。
その積み重ねによって、
いつの間にか、
「ハワイといえばプルメリア」
とまで思われる花になりました。
ハワイ文化は「昔からあるもの」だけではない
ハワイ文化を調べていると、
つい、
「古代から存在するものこそ、本当のハワイ文化」
と考えたくなることがあります。
もちろんNative Hawaiianの文化や、固有の自然を知り、尊重することはとても大切です。
でも現在のハワイの風景には、
長い歴史の中で外から入ってきたものもあります。
それらが既存の文化と出会い、
暮らしの中で新しい意味を持つこともある。
プルメリアは、そのわかりやすい例のひとつなのかもしれません。
プルメリアから考える「居場所」
ここからは文化的な事実ではなく、
私自身がプルメリアを見て感じることです。
生まれた場所と、
自分の居場所は、必ずしも同じじゃなくていい。
プルメリアは、
ハワイ生まれではありません。
でも今では、
ハワイの風景の中で当たり前のように咲いています。
どこから来たのか。
それは大切です。
ルーツを消す必要はありません。
でも同じくらい、
その場所で、どれだけの時間を生きてきたか。
それも、その存在の一部になっていくのだと思います。
プルメリアがハワイ原産ではないと知ったとき、
私はかなり驚きました。
だって、
どう見ても「ハワイの花」なんです。
でも調べてみたら、
最初に導入されたのは1860年。
思っていたより、ずっと最近でした。
それでも160年以上、
ハワイで咲き続けた。
人に愛され、
レイになり、
誰かを迎え、
誰かの思い出の中に残ってきた。
そう考えると、
「ハワイ原産ではない」という事実によって、
プルメリアがハワイらしくなくなるわけではありません。
むしろ私は、
よそから来た花が、その土地の風景になった
というところに惹かれます。
人間も似ているのかもしれません。
生まれた場所だけで、
居場所が決まるわけじゃない。
新しい場所に根を張って、
そこで自分なりに咲き続ける。
長い時間の先で、
いつの間にかそこが、
自分のいる風景になっていく。
プルメリアを見ると、
そんなことを考えます。