ハワイのお土産として有名なもののひとつが、
Kona Coffee(コナコーヒー)。
ハワイ島のKona地区で栽培されるコーヒーで、世界的にも知られています。
ハワイアン雑貨のお店でも、
コーヒー豆。
マグカップ。
バッグ。
看板。
さまざまなところで「KONA COFFEE」という文字を見かけます。
あまりにもハワイを代表する存在なので、
「昔からハワイにコーヒーが生えていた」
と思ってしまいそうです。
でも——
コーヒーはハワイ原産の植物ではありません。
しかも、ハワイに最初に持ち込まれたコーヒーと、現在のコナコーヒーにつながるコーヒーには、少し違う歴史があります。
一杯のコーヒーから、ハワイの移民、農業、土地、そしてブランドの歴史まで見えてきます。
コーヒーはハワイ原産ではない
コーヒーノキの原産地は、ハワイではありません。
ハワイにコーヒーが持ち込まれたのは19世紀。
最初のコーヒーノキは、1820年代にハワイへ導入されたとされています。
つまり、ポリネシア人がハワイへ渡ってきたときに持ち込んだKalo(タロイモ)やʻUala(サツマイモ)のような「カヌープランツ」でもありません。
ハワイの長い歴史から見れば、
コーヒーは比較的新しくやってきた植物
なのです。
それでも現在では、
「ハワイのコーヒー」
と聞けばKona Coffeeを思い浮かべる人がいるほど、有名な存在になりました。
では、なぜKonaだったのでしょうか。
コナコーヒーの始まり
現在のKona Coffeeの歴史を語るうえで重要な人物が、
**Samuel Ruggles(サミュエル・ラグルズ)**です。
1828年ごろ、宣教師だったRugglesがコーヒーノキをハワイ島Kona地区へ持ち込んだことが、Konaでのコーヒー栽培の始まりとして知られています。
ここから少しずつ、Konaの土地にコーヒーが広がっていきました。
ただし、
持ち込んだ瞬間に「Kona Coffee」という世界的ブランドが誕生したわけではありません。
そこから長い時間をかけて、
土地。
気候。
農家。
移民。
栽培技術。
流通。
さまざまなものが重なって、現在のKona Coffeeが作られていきました。
なぜKonaでコーヒーが育ったの?
Kona地区は、ハワイ島西側にあります。
この地域のコーヒー農園の多くは、海岸そのものではなく、Hualālai(フアラライ)やMauna Loa(マウナロア)の斜面に広がっています。
火山性の土壌。
標高。
日照。
雨。
そして斜面の地形。
こうした条件がコーヒー栽培に適していました。
Konaでは、朝は晴れ、午後になると雲が出て雨が降るという気候パターンが見られます。
コーヒーノキは太陽を浴びながらも、午後には雲によって強い日差しから守られる。
さらに火山性の土地は水はけがよい。
こうしたKona独特の環境が、コーヒー栽培を支えてきました。
「Kona Coffee Belt」と呼ばれる地域
Kona Coffeeは、ハワイ島のどこで作ってもKona Coffeeになるわけではありません。
Kona地区の山側には、
Kona Coffee Belt
と呼ばれるコーヒー栽培地域があります。
海岸線に沿うように細長く農園が続いていて、その姿はまさに「ベルト」。
面白いのは、
海のイメージが強いKona Coffeeが、実際には山の斜面で育っていること。
ハワイのコーヒーというと、
海。
ヤシの木。
ビーチ。
そんなパッケージが似合います。
でもコーヒーを育てているのは、その海を見下ろす山側の土地です。
MaukaとMakai。
山と海。
ここでも、ハワイの土地はつながっています。
日本からの移民もKona Coffeeを支えた
Kona Coffeeの歴史で忘れてはいけないのが、
日本から渡った移民たちです。
19世紀末から20世紀にかけて、ハワイには多くの日本人移民が渡りました。
最初はサトウキビ農園などで働いた人々の中から、後にKonaで小規模なコーヒー農園を営む人たちが現れます。
Konaのコーヒー栽培は、大規模農園だけで発展したわけではありません。
土地を借り、
家族で働き、
コーヒーを育てる。
そんな小規模農家が産業を支えてきました。
その中には、
日本。
フィリピン。
ポルトガル。
その他さまざまな地域からハワイへ渡った人々がいました。
だからKona Coffeeの歴史は、
コーヒー豆だけの歴史ではなく、ハワイへ渡ってきた人々の歴史でもある
のです。
コナコーヒーは手作業が多い
Konaのコーヒー農園は、山の斜面にあるところが多くあります。
平坦で巨大な農園なら大型機械を使いやすいですが、Konaではそう簡単ではありません。
そのため、現在でも収穫には人の手が重要です。
しかもコーヒーの実は、同じ木でもすべて同時に熟すわけではありません。
赤く熟した実を選びながら収穫する。
また熟したら採る。
収穫期にはそれを繰り返します。
Kona Coffeeが高価になる理由には、
土地の限られた生産量だけでなく、
こうした人の手が多く必要になること
も関係しています。
「100% Kona Coffee」と「Kona Blend」は違う
ハワイのお土産でコーヒーを買うとき、ぜひ見てほしいところがあります。
パッケージに、
100% Kona Coffee
と書いてあるのか。
それとも、
Kona Blend
と書いてあるのか。
この二つは同じではありません。
100% Kona Coffeeは、その名の通りKona産のコーヒーだけを使ったもの。
一方のKona Blendは、Kona産の豆とほかの産地のコーヒーを混ぜたものです。
だから値段も違います。
「KONA」と大きく書いてあるから全部Kona産だと思って買ったら、実はブレンドだった。
ということもあります。
お土産として選ぶときには、
大きな“KONA”の文字だけでなく、その下まで見る。
これだけでもコーヒー選びが少し面白くなります。
Kona Coffeeは「品種」の名前ではない
ここも誤解しやすいところです。
Kona Coffeeという名前を見ると、
「Konaという種類のコーヒー豆」
のように思うかもしれません。
でも基本的には、
Konaという土地で栽培されたコーヒーを表す地域名です。
ワインで産地が重要になるのと少し似ています。
同じコーヒーノキでも、
どこで育つのか。
どんな気候なのか。
どんな土なのか。
どう栽培されるのか。
それによって味わいも変わります。
つまりKona Coffeeの「Kona」は、
単なるブランド名ではなく、
土地の名前
なのです。
「Kona」という言葉にも意味がある
Konaは、もともとハワイの地名だけに使われる言葉ではありません。
ハワイ語では、風下側、つまりleeward sideを表す言葉としても使われます。
ハワイ諸島では貿易風が吹くため、島の風上側と風下側では気候が大きく変わります。
風上側は雨が多くなりやすく、
風下側は比較的乾燥する。
ハワイ島のKona地区も、島の風下側にあります。
普段何気なく呼んでいる「Kona Coffee」という名前の中にも、
ハワイの土地と風の感覚
が入っているのです。
ハワイらしいものは、ハワイ原産とは限らない
Kona Coffeeの歴史は、Plumeria(プルメリア)にも少し似ています。
プルメリアもハワイ原産ではありません。
コーヒーもハワイ原産ではありません。
それでも、
土地に植えられ、
人が育て、
暮らしや産業に入り、
長い時間をかけてその土地を代表する存在になった。
「ハワイ原産」と「ハワイらしい」は、必ずしも同じではない。
Kona Coffeeも、そのことがよくわかる存在です。
一杯のコーヒーの後ろにあるもの
Kona Coffeeを飲むとき、
最初に感じるのはもちろん味です。
香り。
酸味。
甘み。
苦み。
でも歴史を知ると、その一杯の後ろに別のものも見えてきます。
火山がつくった土地。
山に降る雨。
ハワイの太陽。
コーヒーを持ち込んだ人。
農園を作った人。
海を渡ってきた移民。
実を摘んだ人。
そしてKonaという土地。
一杯のコーヒーは、
その土地だけで勝手に生まれたものではありません。
自然と人の両方があって、現在のKona Coffeeがあります。
私はKona Coffeeについて、
ずっと単純に、
「ハワイの有名なコーヒー」
くらいに思っていました。
でも調べてみると、一番面白かったのは、
コーヒーそのものより、
どうやって「ハワイのもの」になっていったのか
というところでした。
コーヒーはハワイ原産ではない。
人が持ってきた。
Konaの土地に植えた。
そこで育った。
そして、日本を含むいろいろな場所からやってきた人たちが農園を支えた。
長い時間をかけて、
「Kona Coffee」という名前が世界へ知られるようになった。
そう考えると、
Kona Coffeeは単なるハワイ土産ではなく、
土地と、人と、移住の歴史が混ざってできたもの
にも見えてきます。
次にKona Coffeeを飲むとき、
パッケージに書かれた「KONA」という文字を少しだけ見てみてください。
その名前は、ただの商品名ではありません。
そのコーヒーが育ってきた土地の名前です。