ハワイには、少し不思議な花があります。
花びらが、
半分しかないように見える花。
その名は、
Naupaka(ナウパカ)。
Naupakaは海岸や山に生えるScaevola属の植物で、花びらが片側に広がり、まるで半分だけ咲いているように見えます。
そしてハワイには、この独特な花の姿にまつわる物語が伝えられています。
海に咲くナウパカ。
山に咲くナウパカ。
離れた場所に咲きながら、それぞれが半分のような花を持つ。
なぜ、こんな姿をしているのでしょうか。
ナウパカ(Naupaka)とは?
Naupakaは、Scaevola(スカエボラ)属の植物につけられたハワイ名です。
特徴はなんといっても、その花。
一般的な花のように花びらがぐるりと一周するのではなく、片側に花びらが広がる扇のような形をしています。
そのため、
「半分しか咲いていない花」
のように見えるのです。
でも、花びらが欠けているわけでも、
咲く途中でもありません。
これがNaupakaの完成した花の姿です。
海に咲く「Naupaka Kahakai」
海岸でよく見られるのが、
Naupaka Kahakai(ナウパカ・カハカイ)。
Kahakaiは「海岸」を意味します。
Beach Naupakaとも呼ばれ、厚く光沢のある葉と、白い扇状の花が特徴です。
潮風。
強い日差し。
砂浜。
海に近い厳しい環境にも耐えながら育ち、ハワイの海岸風景をつくる植物のひとつです。
山に咲く「Naupaka Kuahiwi」
一方、山側には、
Naupaka Kuahiwi(ナウパカ・クアヒヴィ)
と呼ばれる山地性のNaupakaがあります。
Kuahiwiは山地を表す言葉です。
ここで面白いのは、
海のNaupakaと山のNaupakaが、まったく同じ一種類の植物ではないということ。
どちらもScaevola属ですが、海岸に生えるものと山地に生えるものには異なる種類があります。
それなのに、
海にも半分のような花。
山にも半分のような花。
この不思議な共通点から、ハワイではひとつの物語が生まれました。
海と山に離れた恋人たちの物語
Naupakaには、
海と山に引き離された恋人たち
の物語が伝えられています。
伝承にはいくつかの異なる語り方があります。
登場人物や、二人が離れなければならなくなった理由も、物語によって違います。
それでも、多くの物語に共通しているのが、
愛し合う二人が離ればなれになり、一人は海へ、一人は山へ。そして海と山には、半分に見える花が咲くようになった
というモチーフです。
海に咲くNaupaka Kahakai。
山に咲くNaupaka Kuahiwi。
離れた二つの場所で、
同じように半分の姿をした花が咲く。
その姿に、人々は離れた恋人たちを重ねました。
二つ合わせると、一つの花になる
Naupakaの花は、花びらが片側へ広がっています。
そのため、
二つの花を向かい合わせると——
まるで一輪の花のように見えます。
一つは海。
一つは山。
離れていると半分。
再び出会えば一つになる。
Naupakaの特徴的な姿と、離ればなれになった恋人たちの物語が美しく重なります。
もちろん植物学的には、一輪の花が本当に二つに割れて、海と山へ分かれたわけではありません。
植物の形に、人々が物語を重ねたものです。
でも、だからこそ面白い。
自然が先にあり、
その姿を見た人が、
そこに意味を見つけたのです。
「海は下半分、山は上半分」なの?
Naupakaの物語では、
海岸のNaupakaは花の下半分。
山のNaupakaは上半分。
そして二つを合わせると一輪になる——
と語られることがあります。
ただし、これは植物学的な決まりではありません。
実際の花は枝の向きや花の付き方によって、上下左右の見え方が変わります。
そのため、
「海のNaupakaは必ず下、山のNaupakaは必ず上」
と覚えるより、
海と山に分かれた二つの花を表現する物語の中の象徴として捉える方が自然でしょう。
Naupakaはハワイだけに咲くの?
Naupakaという名前から、
ハワイにしかない植物のように思うかもしれません。
ところが、これも少し違います。
海岸に生えるNaupaka Kahakaiは、ハワイだけでなく、太平洋やインド洋などの熱帯・亜熱帯地域にも広く分布しています。
一方、
ハワイの山地には、ハワイ固有のNaupakaも存在します。
つまり、
「Naupaka=すべてハワイ固有種」
ではありません。
同じNaupakaと呼ばれる植物の中にも、
広い地域に分布する海岸性のもの。
ハワイ独自に進化した山地性のもの。
さまざまな種類があります。
なぜ「半分の花」に見えるの?
Naupakaが半分に見えるのは、
Scaevola属特有の花の構造によるものです。
花びらが片側へ広がるため、英語ではScaevolaの仲間を**fan flower(扇形の花)**と呼ぶこともあります。
つまり、
Naupakaは半分しか咲かなかった花ではありません。
何かが足りないわけでもない。
最初から、この姿で完成しています。
ここを知ってから花を見ると、
Naupakaの印象が少し変わります。
Naupakaの「花言葉」は?
Naupakaについて調べると、
「離れた恋人」
「切ない愛」
「永遠の愛」
などが花言葉として紹介されていることがあります。
ただし、ここは少し注意が必要です。
これらは、Naupakaに伝わる恋人たちの物語から連想された表現が、「花言葉」として紹介されている場合があります。
古代ハワイでNaupakaに正式な花言葉が決められていた、という意味ではありません。
ハワイ文化として大切なのは、
Naupakaの半分に見える花と、
海と山に離れた恋人たちを結びつける物語が伝えられてきたことです。
「離れていても、つながっている」という物語
一人は海。
一人は山。
簡単には会えない。
それでも、
二人は同じような半分の花として咲いている。
Naupakaの物語が今も人を惹きつけるのは、
単に「悲しい恋の話」だからではないのかもしれません。
離れて暮らす家族。
遠くへ行った友人。
別々の道を歩くことになった大切な人。
距離ができても、
その人から受け取ったものまで消えてしまうわけではありません。
離れていることと、つながりがなくなることは同じではない。
Naupakaの物語には、そんな想いを重ねることができます。
半分ではなく、これで完成している
Naupakaの花を見ると、
どうしても、
「半分しかない」
と思ってしまいます。
でも植物として見れば、
半分ではありません。
これがNaupakaという花の完成形です。
足りないものがあるから、この形なのではない。
欠けてしまったから、この姿なのでもない。
人間がその不思議な姿を見て、
「もう半分がどこかにあるのではないか」
と想像した。
そして、
海と山に咲く花を見つけ、
二つを恋人たちの物語で結んだ。
そう考えると、
Naupakaの魅力は「半分の花」というだけではありません。
自然の形から、人が物語を生み出した花。
そこに、この植物の面白さがあります。
ハワイの花は、物語を知ると違って見える
ハワイには、
Plumeria。
ʻŌhiʻa Lehua。
Naupaka。
さまざまな花があります。
南国らしい色や形だけでも十分に美しい。
でも、その背景を知ると、
同じ花が少し違って見えてきます。
Naupakaなら、
海と山。
離れた恋人。
半分に見える花。
そして、
本当は最初から完成している、不思議な形。
ハワイアンジュエリーやアート、雑貨に描かれた花も、
「きれいな南国の花」で終わらせず、
「これは、どんな花なんだろう?」
と少しだけ背景を知ってみる。
そこからハワイの自然や文化、そして人々が語り継いできた物語へとつながっていきます。