ハワイ神話に登場する主要な神々のひとり、ロノ(Lono)。
ロノは一般に、農耕、豊穣、雨などと深く結びつく神として知られています。
そしてロノを知るうえで欠かせないのが、古代ハワイの特別な季節、**マカヒキ(Makahiki)**です。
農作業を終え、収穫に感謝し、競技や祝宴を行う。
そして、この期間には戦争も休止されました。
ロノを知ると、ハワイの人々が「自然から受け取ること」と「感謝すること」をどのように結びつけていたのかが見えてきます。
ロノ(Lono)とは?
ロノは、カーネ(Kāne)、クー(Kū)、カナロア(Kanaloa)と並び、ハワイ神話の主要な神々のひとりとして知られています。
特に、
農耕、豊穣、雨、雲、農作物
などとの関係が深い神です。
古代ハワイでは、土地から得られる食べ物は人々の暮らしそのものを支えていました。
雨が降り、
植物が育ち、
作物が実り、
人が生きていく。
ロノは、そんな自然の循環と人々の暮らしの中に存在する神でした。
ロノと「雨」の関係
ハワイの美しい自然をつくっているもののひとつが、雨です。
私たちは旅行先で雨が降ると、
「せっかくのハワイなのに」
と思ってしまうかもしれません。
でも島で暮らす人々にとって、雨は植物を育て、淡水をもたらす大切な存在です。
タロイモ(カロ)。
ウル(パンノキ)。
サツマイモ。
さまざまな植物が育つためにも水が必要です。
雨は邪魔なものではなく、命を育てる恵みでもあります。
ロノが雨や豊穣と結びついていることを知ると、ハワイの雨の見え方まで少し変わってきます。
マカヒキ(Makahiki)とは?
ロノを知るなら、マカヒキについても知っておきたいところです。
マカヒキは、ロノと深く結びついた古代ハワイの季節・祭礼です。
おおむね秋から冬にかけて数か月続き、農耕の一区切りとともに、収穫への感謝や宗教的な儀礼、競技、祝宴などが行われました。
そして非常に特徴的なのが、
マカヒキの期間には戦争が禁じられたこと。
日常の労働にも一定の制限が設けられ、人々は神々や土地から与えられた恵みに感謝する時間を過ごしました。
一年中働き続けるのではありません。
戦うときがあり、
育てるときがあり、
そして、
立ち止まって感謝する時間がある。
そんな一年のリズムがありました。
マカヒキでは何をしていたの?
マカヒキでは、宗教的な儀礼だけでなく、さまざまな競技や遊びも行われました。
走る。
格闘する。
槍を投げる。
滑る。
技や力を競いながら、人々が集い、祝う時間でもありました。
また、ロノを象徴するものが地域を巡り、人々から供物が捧げられる儀礼も行われました。
収穫を終えたら、
「今年も採れた」
で終わるのではなく、
恵みを与えてくれた存在へ感謝する。
マカヒキには、そんな文化が表れています。
クーとロノ——「動く時間」と「休む時間」
前の記事で紹介したクー(Kū)は、戦いをはじめ、漁や森林、ものづくりなど、人々のさまざまな活動と結びつく神でした。
一方のロノは、
雨。
農作物。
豊穣。
そしてマカヒキ。
という世界と深く関係します。
マカヒキの期間には戦争が休止されるため、ロノの季節とクーに関係する活動の季節が対照的に説明されることがあります。
ただし、
「クー=戦争、ロノ=平和」
とだけ覚えると少し単純すぎます。
どちらもハワイの人々が生きていくうえで必要な世界と結びついた神です。
動く時間と、立ち止まる時間。
その両方が一年の中に存在していました。
キャプテン・クックは「ロノ」と思われていた?
ロノについて調べると、必ずといっていいほど登場する有名な話があります。
1778年にハワイ諸島へ到達したイギリスの探検家、**ジェームズ・クック(キャプテン・クック)**です。
クックがハワイ島へやってきた時期がマカヒキと重なっていたことなどから、
ハワイの人々はクックをロノ神だと思った。
という説が長く広く紹介されてきました。
ただし、現在ではこの説明をそのまま歴史的事実として扱うことには慎重な見方があります。
ハワイの人々が本当にクック本人を「ロノという神そのもの」と信じていたのか、それともロノに関係する儀礼や象徴の中でクックを位置づけたのか。
研究者の間でも議論されてきたテーマです。
そのため、
「キャプテン・クック=ロノ神だと信じられた」
と単純に断定するより、
マカヒキやロノとの関係から、そのように解釈されてきた歴史がある
と理解する方が適切です。
ロノから見えてくるハワイの暮らし
ロノについて知っていくと、神話の話なのに、実際の暮らしが見えてきます。
雨を待つ。
作物を育てる。
収穫する。
感謝する。
休む。
そして、また次の一年を始める。
自然の中で暮らしていれば、人間の都合だけで物事を進めることはできません。
雨が降らないこともある。
作物が思うように育たないこともある。
だからこそ、豊かに実ったときには感謝する。
ロノという神の背景には、自然から受け取って生きる人々の暮らしがあります。
ハワイというと、
一年中暖かくて、
海があって、
いつでものんびりしている。
そんなイメージを持っていました。
でもハワイ文化を調べていくと、昔の人々にも一年のリズムがあったことがわかります。
働く。
育てる。
収穫する。
そして、休む。
特に私が面白いと思ったのが、マカヒキです。
収穫したら、すぐ次の仕事へ行くのではない。
一度立ち止まって、
「今年も恵みをもらいました」
と感謝する時間をつくる。
ロノを知ると、ハワイの「豊かさ」という言葉が、少し違って見えてきます。
ハワイ雑貨に描かれている植物や雨、自然のモチーフも、その土地で暮らしてきた人々の文化を知ることで、ただの南国デザインではなくなっていくのだと思います。