ʻĪlio(イリオ)とは?ハワイの犬とʻAumakua、ポリネシア人と海を渡った歴史

ハワイ文化の動物というと、

ホヌ。

Pueo。

Manō。

このあたりを思い浮かべる人が多いかもしれません。

でも、もっと身近な動物も古くからハワイの人々と暮らしていました。

ʻĪlio(イリオ)——犬です。

しかも犬は、ヨーロッパ人がハワイへ持ち込んだ動物ではありません。

初期のポリネシア人たちは、広大な太平洋をカヌーで渡ってハワイへやってくるとき、

豚。

鶏。

植物。

そして——

犬も一緒に連れてきました。

つまりʻĪlioは、ハワイの人々と一緒に海を渡ってきた動物なのです。


ʻĪlio(イリオ)とは?

ハワイ語で犬は、

ʻĪlio(イリオ)。

初期のポリネシア人によってハワイへ持ち込まれ、人々の暮らしの中で長く関わってきた動物です。

さらに犬は、家族によっては**ʻAumakua(アウマクア)**と結びつく存在でもありました。

現在の私たちにとって犬は、

ペット。

家族。

相棒。

というイメージが強いと思います。

でも古いハワイ社会でのʻĪlioは、それだけではありませんでした。

食料になることもあり、

人々と暮らし、

信仰や神々とも結びつく。

一つの言葉だけでは表せない存在だったのです。


犬もカヌーに乗ってハワイへやってきた

ハワイへ渡ったポリネシア人たちは、何千キロもの海を航海して島々へ到達しました。

もちろん、人間だけで来たわけではありません。

新しい土地で暮らしていくために、

Puaʻa(豚)
ʻĪlio(犬)
Moa(鶏)
Kalo(タロイモ)
ʻUala(サツマイモ)
Niu(ココナッツ)

など、生活に必要な動植物も海を渡りました。

想像してみると、すごい光景です。

水平線しか見えない太平洋。

星や風、波、鳥を読みながら進むカヌー。

その船の中に、

犬もいた。

ʻĪlioの歴史は、人間がハワイへ渡った航海の歴史ともつながっています。


ハワイアン・ポイ・ドッグとは?

昔のハワイにいた犬として知られているのが、

**Hawaiian Poi Dog(ハワイアン・ポイ・ドッグ)**です。

現在では絶滅しており、当時の犬をそのまま見ることはできません。

「Poi Dog」という名前の通り、犬にはカロやポイなどを含む植物性の食べ物が与えられていました。

太平洋地域では、犬を食用に育てる際、タロイモなどを含む食事を与える文化がありました。

そして、ここからが現代の私たちには少し驚くところです。


ʻĪlioは「ペット」であり、食べ物でもあった

昔のハワイでは、

犬を食べる文化もありました。

豚、犬、鶏、魚、野鳥など、さまざまな動物が人々の食生活を支えていました。

現代の日本人からすると、

「犬を食べるの?」

と抵抗を感じる人もいるでしょう。

でも、現在の価値観だけで昔の文化を判断するのではなく、

当時の食料事情や暮らしの中で、犬がどのような存在だったのか

を見る必要があります。

古代ハワイでは、犬や豚は人間とともに暮らしながら、食料資源としても利用されていました。


では、犬を大切にしていなかった?

そう単純でもありません。

ここがʻĪlioを知るうえで興味深いところです。

食料になる犬がいる一方で、

犬はʻAumakuaと結びつくこともありました。

ʻAumakuaとは、家族や祖先と深く結びついた守護的な存在。

その姿は一つではありません。

Manō(サメ)。

Pueo(ハワイコミミズク)。

Heʻe(タコ)。

植物。

岩。

そして、

ʻĪlio(犬)。

さまざまな自然の存在が、特定の家族にとってʻAumakuaとなることがありました。

つまり、

「犬は食べ物だった」

だけでも、

「犬は神聖な存在だった」

だけでもない。

人と犬との関係によって、その意味は違っていたのです。


ʻAumakuaとなった犬は食べなかった

ʻAumakuaと人間との関係は、一方的なものではありませんでした。

人間はʻAumakuaを敬い、大切にする。

ʻAumakuaは家族を守り、警告し、導く。

そこには相互的な関係がありました。

そして、自分たちのʻAumakuaとなる存在を傷つけたり、食べたりすることは避けられました。

だから、

「ハワイでは犬を食べた」

という文化と、

「犬がʻAumakuaになることもあった」

という文化は矛盾しません。

すべての犬が、すべての人にとって同じ意味を持っていたわけではない

からです。

→ 関連記事
「ʻAumakuaとは?ハワイの先祖・守護存在と自然のつながり」


犬はKūとも結びついていた

ʻĪlioには、もうひとつ興味深いつながりがあります。

ハワイの主要な神のひとり、

**Kū(クー)**です。

Kūは戦いだけではなく、

統治。

仕事。

建築。

漁業。

農業。

など、さまざまな領域と結びつく神として知られています。

そしてʻĪlioも、Kūと結びつく存在のひとつとして伝えられています。

犬という一つの動物から、

航海。

食文化。

ʻAumakua。

神々。

さまざまなハワイ文化へつながっていきます。


「ハワイアン・ポイ・ドッグ=太っていて怠け者」?

昔のHawaiian Poi Dogについて、

「ポイばかり食べていたから太っていた」

「頭が大きく、足が短かった」

「動きが鈍かった」

といった説明を見かけることがあります。

こうした特徴には古い記録をもとに語られている部分もあります。

ただ、現在は当時の個体群が残っていません。

そのため、

現代の犬種図鑑のように、外見や性格を細かく断定するのは難しい

ところがあります。

ʻĪlioについて確かに見えてくるのは、

ポリネシア人とともに海を渡ったこと。

人々の暮らしの中で食料としても利用されたこと。

一部ではʻAumakuaと結びついたこと。

そして神々との関係も持っていたことです。


ʻĪlioとハワイアン・モンクシールは同じ?

ハワイでʻĪlioという言葉を調べていると、

もう一つ面白い名前に出会います。

ハワイアン・モンクシールです。

ハワイ語では、

ʻĪlio holo i ka uaua

という名前で呼ばれます。

「荒い海を走る犬」

といった意味を持つ言葉です。

もちろん、モンクシールは犬ではありません。

でも、海を泳ぐその姿を、

海を進む犬のように表現した。

名前を知るだけでも、ハワイの人々が生き物をどのように見ていたのかを想像できます。


「犬=忠誠の象徴」はハワイ古来の意味?

ハワイアンモチーフの説明では、

犬=忠誠、友情、家族愛

などと紹介されることがあります。

現代の犬のイメージとしては、とても自然です。

ただし、

「古代ハワイでʻĪlioは忠誠を象徴するモチーフだった」

とまで断定するのは避けた方がよいでしょう。

文化的に確認できるのは、

ポリネシア人とともにハワイへ渡ったこと。

人々の暮らしの中で利用されたこと。

一部ではʻAumakuaと結びついたこと。

Kūとも関係を持っていたこと。

です。

現代になって広まったイメージと、

古くから伝わる文化的な背景。

この二つを分けて知っておくと、ハワイアンモチーフをより深く楽しめます。


人と犬は、一緒に海を渡ってきた

ʻĪlioについて知れば知るほど、

印象に残るのは、

犬も移住者だった

ということです。

ハワイに最初からいたわけではありません。

人間と一緒にカヌーへ乗り、

海を渡り、

新しい島で暮らし始めた。

そして長い時間の中で、

人々の暮らしに入り、

食文化に入り、

信仰や神々とも結びついていった。

ʻĪlioは、

海を越えてハワイ文化の一部になった動物

だったのです。


犬と人が、一緒にハワイへ向かった

ʻĪlioについて、

現代の私たちが一番驚くのは、

やはり、

「犬を食べる文化もあった」

という部分かもしれません。

そこだけを見ると、

現在の犬との暮らしとは大きく違って見えます。

でもʻĪlioの歴史をそこだけで終わらせると、

大切な部分を見落としてしまいます。

食べ物にもなった。

人と暮らした。

ʻAumakuaと結びつくこともあった。

神々とも関係した。

そして何より、

人間と一緒に太平洋を渡ってきた。

新しい土地へ向かうカヌー。

周囲に見えるのは、

どこまでも続く海。

そのカヌーの上に、

人間だけではなく犬もいる。

そう考えると、

ʻĪlioは単なる「昔のハワイの犬」ではありません。

人と一緒にハワイへやってきて、その歴史をともに生きた動物。

ハワイの犬を知ることは、

人々がどのように太平洋を渡り、

新しい土地で暮らしをつくっていったのかを知ることにもつながります。

ブログに戻る