ハワイと聞くと、まず思い浮かぶのは海かもしれません。
どこまでも続く青い海。
大きな波。
白い砂浜。
でも、昔のハワイで人々が暮らす場所を考えるうえで、とても重要だった水は——
海水ではなく、飲むことのできる淡水でした。
湧き水。
川。
雨。
地下を流れる水。
水がある場所には植物が育ち、人が暮らし、集落が生まれる。
実際、ハワイ島のKaloko-Honokōhauでは、海岸近くに湧き出す水の存在が、人々の暮らしを支えられる場所であることを示していたと国立公園局が紹介しています。
ハワイ文化を知ると、「水」は単なる生活資源以上の存在だったことが見えてきます。
ハワイ語で水は「Wai(ワイ)」
ハワイ語で淡水は、Wai(ワイ)。
海に囲まれた島だからこそ、飲むことのできる水はとても大切でした。
人が飲む。
料理に使う。
植物を育てる。
体を洗う。
生活のあらゆるところに水が必要です。
乾燥した地域では、地下から湧き出す水を利用することもありました。
国立公園局によると、ハワイ島西部などに見られるアンキアライン・プールと呼ばれる地下水と海水が混ざる池も、古代ハワイの人々にとって重要な淡水資源でした。飲用や水浴びなど、用途を分けて利用されていた場所もあります。
水があると、植物が育つ
人間が水を飲めるだけではありません。
水があることで、食べ物を育てることができます。
ハワイの伝統的な食文化を代表する植物のひとつが、**カロ(Kalo/タロイモ)**です。
特に水田で育てるカロには、豊かな淡水が欠かせません。
ハワイ大学西オアフ校も、湧き水や川の水がカロを育て、地域社会を養ってきたことを紹介しています。
水が流れる。
カロが育つ。
食べ物ができる。
そこに人が暮らす。
そして家族や集落が生まれる。
水の流れは、そのまま人々の暮らしの流れでもあったのです。
山の森も「水」とつながっている
ハワイの水を考えるとき、海岸や川だけを見ていては足りません。
大切なのが、山の森です。
山に降った雨や霧の水分は森林によって集められ、地下へ浸透し、やがて川や湧き水となって人々の暮らす場所へ流れてきます。
ハワイ火山国立公園も、ハワイの高地森林が精神的に大切にされてきただけでなく、淡水を集めるという実際的な役割も担っていることを紹介しています。
つまり、
山。
森。
雨。
川。
田畑。
海。
それぞれ別々の景色ではありません。
ひとつの水の流れでつながっています。
淡水と深く結びつく神「カーネ」
ハワイ神話でも、淡水は特別な存在として登場します。
その水と深く結びつく神が、四大神のひとり**カーネ(Kāne)**です。
ハワイ大学の研究資料では、淡水そのものがカーネの**kinolau(自然界に現れる姿・身体的な現れ)**のひとつとして説明されています。
カーネとカナロアが土地を旅し、水を探す伝承も残っています。
現在のホノルルにあるKānewaiでは、カーネが地面を突くと冷たい湧き水が現れたという伝承がハワイ大学によって紹介されています。
ただ水が湧いた、というだけの話ではありません。
水が生まれることは、そこで生命が続けられるようになること。
だから淡水と生命が結びつくのは、とても自然なことだったのでしょう。
※関連記事
「カーネ(Kāne)とは?生命・水・太陽と深く結びつくハワイの神」
「命が集まる場所」には水がある
何もないように見える土地でも、
水があれば植物が育つ。
植物があれば、生き物が集まる。
食べ物を育てることができれば、人も暮らせる。
逆に、雨が少なく淡水を得にくい土地では、人が暮らすための条件は厳しくなります。
ハワイ島の乾燥した海岸地域についても、淡水源の存在が集落を維持できるかどうかに大きく関係していたことが、考古学・歴史資料からわかっています。
だから、
「水のある場所に生命が集まる」
というのは詩的な表現だけではありません。
実際のハワイの暮らしそのものだったのです。
ハワイの地名にも残る「Wai」
ハワイを旅行すると、「Wai」の入った地名をよく目にします。
Waikīkī。
Waimānalo。
Waimea。
Waipahu。
もちろん、それぞれの地名には固有の意味や歴史があり、「Waiが付けば全部同じ」というわけではありません。
それでも、ハワイの地名を調べていると、水にまつわる言葉が数多く残されていることに気づきます。
その土地を理解するために、
「どんな水があったのだろう?」
と考えてみる。
それもハワイを見る面白い方法のひとつです。
海だけでは見えないハワイ
観光でハワイを訪れると、どうしても海側へ目が向きます。
でも少し視線を変えて、
海から山を見る。
山から流れてくる川を見る。
森を見る。
そこから土地を見る。
すると、ひとつの島が水によってつながっていることに気づきます。
ハワイの自然は、
「海がきれい」
「山がきれい」
という別々の景色ではありません。
雨が山へ降り、
森が水を受け止め、
川や地下水となり、
人や植物を養い、
やがて海へ流れていく。
その循環の中に、人間の暮らしもあります。
この話を最初に知ったとき、私が面白いと思ったのは、
「命が集まる場所には、ちゃんと理由がある」
ということでした。
人がたくさん暮らしているから、その場所が栄えた。
植物がたくさんあるから、豊かな土地になった。
そう見ることもできます。
でも、さらにその奥をたどると、
水があった。
雨が降った。
森が水を蓄えた。
だから植物が育ち、人が暮らせた。
目に見えている景色の、その一つ前に理由があるんです。
ハワイ雑貨には海や植物を描いたものがたくさんあります。
でも、その植物を育てている水まで考えてみると、ハワイの自然がバラバラのモチーフではなく、ひとつにつながって見えてきます。
ハワイを知る面白さって、こういうところにもあるのだと思います。